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「夕なぎ」についての覚書

 山口県の萩市に「夕なぎ港」という港があります。「なぎ」は漢字(さんずい+和)です。
 この港の訪問記で「なぎ」の字は漢字のJISコードはおろかユニコードにも入っていない」と気軽に書いたのですが,ふと気がついたらこの「さんずい+和」という文字はunicode「追加漢字面」の「CJK統合漢字拡張B」の中に入っていました。コードはU+23dd3です。このコードで数値文字参照すればWEBで「𣷓」の漢字が表示できるので,以下ではこのコードを使って表示してみます。この拡張面は2001年Unicode 3.1.0で追加されたもので,私の現在の環境ではMS明朝などに実装されていますが,実装されていないフォントも多く,古いOSやブラウザ,特にスマホなどでは表示できないかもしれません。「灯台の形」のページではすべてひらがなで表記しています。このページで「なぎ」の字が正常に見えないとしたら,ご勘弁を。
 灯台巡りを始めて「灯台表」を入手し,そのデータをエクセルに落とし込んだ時に「0769萩港夕𣷓東防波堤灯台/0770萩港夕𣷓西防波堤灯台」の「𣷓」の字が当時の私の環境では入力できず,「JISコードにもユニコードにも入っていない」と思い込んでいたのです(この文字がパソコン標準のフォントに実装されたのはおおよそ2007年ごろ,私が灯台表と取り組んだのは2010年以降なので,その頃最新のパソコンを使っていればこの文字を見つけることができたかもしれません)。
 以下気になって漢和辞典を調べた結果です。
(1)手持ちの漢和辞典(『学研漢和大字典』藤堂明保編,1978)には載っていませんでした。
(2)『諸橋大漢和』(『大漢和辞典』諸橋轍次,他,大修館書店,〜2000)にもやはり見当たらない(音訓索引を見たら「なぎ」の項にこの字も草彅君の「彅」もありませんでした)と思ったら,補巻に収載されていました。「(国字)なぎ。波のおだやかに静まっていること,⺡(水)と和の合字で,和はおだやかにやわらぐ意。水と合わせて,波の静まっている,なぎの意味を表す。夕𣷓は山口県萩市の地名」とあり,夕𣷓という地名が載っていて感激です。
(3)『新潮日本語漢和辞典』(新潮社編,2007年)には,国字で訓は「なぎ」,字義に「(意味)なぎ。(ア)海上の風や波が穏やかになること。(イ)「野𣷓(のうなぎ)」は和歌山県東牟婁郡串本町の地名。(ウ)「音𣷓(おとなぎ)」は姓氏の一つ。◇「なぎ」は多く「凪」と書く」とあり,さらにJIS第4水準(句点2-7864,シフトJIS:F5DE)に入っていることまで記されていて,ここに至って「漢字のJISコードはおろかユニコードにも入っていない」というのは全面的に間違いであることが分かりました。
(4)『新選漢和辞典(第八版)』(小学館,2011)にも同様に,国字で「意味〈なぎ〉波が穏やかになること。(姓)音𣷓おとなぎ(地名)野𣷓のうなぎ」と記されています。この辞書にはJISコードやUnicodeが載っていました。
(5)『新漢語林(第二版)』(大修館書店,2011)にも国字として「𣷓」が載っていました(意味の項はなく,「野𣷓(のうなぎ)」だけの記載)。
 (2)〜(5)では国字とされていますが,友人から「漢和辞書は角川の『新字源』がいい」とか「『新字源』には,熟語が収録されていて,国字じゃないらしい」とかの情報をもらいました。
(6)『角川新字源(改訂新版)』(2017年10月30日)を購入して調べてみたところ,カ(クヮ漢)という音が示されており,意味として「『涫𣷓カンカ』は,波が逆巻くさま」,続いて日本固有のよみ・意味として「なぎ。風がなく波の穏やかな状態。凪なぎ」と記されていました。この辞書は調べた中では一番新しいので,JISコードもUnicodeも載っています。
(7)『全訳漢辞海(第二版)』(三省堂書店,2006)には漢音として「ワ」が挙げられていて意味の項で「▼涫𣷓。(日本語用法)なぎ。波が静まった状態。凪なぎ」と記されていて,参照せよという「涫𣷓」の項には「カンワ」と読みが記されていました。ちなみにこの辞典はJISコードは示されていますが,Unicodeはなしとなっています(最新版は第四版で「最新のJISコード、ユニコードを明示」と謳われています)。
 6種の辞書で4冊は国字,2冊が漢音と熟語を載せていますが,国字とした辞典は漢籍にその用例を見つけることができなかったのでしょう。それほど使用頻度の低い字であったのかもしれません。中国の人にとっても「和」の付く水が「波が逆巻くさま」に使用するのは違和感があったのでしょう(私の妄想です)。
 これらのことを調べている中で,漢字コードに関する解説書を読めば読むほど訳が分からなくなった(規格を作っている人たちが訳が分からなくなっている模様)ので,この話はもうおしまいにします。副産物として,これまで諸般の事情により漢字コードShift-JISで運用していたこのサイトをUTF-8に改めました。いまはソフトやブラウザがUnicodeにちゃんと対応しているかを確認する必要がありますが,そのうちShift-JISに対応しているか心配しなくてはならないようになるのでしょう。

 そんなわけで,WEBで「𣷓」が表示できると喜んで「山口県の灯台」のページや夕𣷓港のページを書き換えたのですが,やっぱりうまく表示されない場合もあるようなので当面はかなで表示することにしました。